日本の美しいものづくりの旅【大阪浪華錫器(なにわすずき)】

熱伝導率が高く、燗や冷酒の器として最適な錫器

 お酒を注ぐとまろやかになり、花を生けると花もちがよくなる。不思議な力と気品をたたえる錫器。金属でありながら、土の柔らかさを感じさせる天然素材の器が日本に伝えられたのは、奈良時代といわれています。その後、江戸時代には商業の中心地“大坂”で広く普及し、錫器づくりが盛んに。その技術は一層磨かれ、用途の幅も広がりました。
 1983年、「大阪浪華錫器」として通産大臣(現経済産業大臣)より伝統的工芸品に指定。大阪が育んだ錫器文化は、美しい光沢と優れた実用性を備えた暮らしの道具として、今も使う人を魅了しています。

錫器のおこり

 錫器の歴史は古く、紀元前1500年、古代エジプト王朝の都市遺跡から発掘された「巡礼の壺」と呼ばれる酒器が世界最古のものだとか。日本では約1300年前の奈良時代、遣隋使・遣唐使により渡来。宮中はもとより、公家や寺社などの上流階級に好まれ、京の都を中心に、茶壺や神仏具などの錫器づくりが盛んになりました。
 江戸時代に入り武家社会にも普及し、京都から大阪へと生産がシフト。多くの錫器製造業者が集まり、特産品としての地位を確立しました。

今の生活に生かす

 溶かして何度でも再生できる錫は、ヨーロッパでは環境に優しいピュアな金属の意味で“グリーンメタル”とも呼ばれています。熱伝導率が高く、お酒の燗が早くできるため、徳利・タンポ・チロリなど酒燗器の種類が豊富です。また、冷たい飲み物を入れると瞬時に冷え、冷たさが持続します。密閉度が高く茶葉の香りを保つ茶筒、花が長持ちする花器のほか、皿や箸置きなどのテーブルウェアから、朱肉入れやペン皿といった文具まで。変色しにくく扱いやすい錫アイテムは、マルチに活躍してくれそうです。

《錫漆 SUZU-URUSHI》
錫に、漆の魅力を合わせる

 産地の気候や風土でそれぞれ特色がある漆塗り。各地の漆職人とのコラボレーションにより錫漆が誕生。錫と漆の特性と美しさが絶妙に合わさり、唯一無二の和モダンな風合いが生まれています。

〈取材協力〉 大阪錫器
大阪府大阪市東住吉区田辺6-6-15
*現在、今井さん含め6名の伝統工芸士が錫器づくりに従事。約20名の職人さんの中には20代の若手職人も活躍中です。

 

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