日本の美しいものづくりの旅【小石原焼(こいしわらやき)】

暮らしに役立つ「用の美」を追求

 ここ福岡県朝倉郡小石原地区は、標高500~900メートルの山々に囲まれ、棚田や茅葺き屋根の家屋など日本の原風景が広がります。小石原焼は1682年、筑前黒田藩主が招いた伊万里の陶工により磁器づくりが伝わり、すでにこの地にあった茶陶の高取焼と交流しながら発展した歴史があります。約350年にもわたる長い年月の間、伝統の技が受け継がれた小石原焼は、陶磁器においては、九谷焼と並んで初めて伝統的工芸品に指定され、イギリスの陶芸家バーナード・リーチに「用の美」と称賛されるなど、その魅力は海外にも知られています。

土のぬくもりを感じる素朴な幾何学模様

 小石原焼の特徴は、土のぬくもりと素朴なデザインが生み出す独特の風合いにあります。その技法は様々ですが、飛び鉋(かんな)は器が生乾きのときにろくろを回しながら刃先で生地を削ることで規則的に模様を入れる代表的な技法です。他にも、刷毛目や櫛目など職人技が施された器は同じものが二つとなく、店頭で選ぶのも楽しみの一つとなっています。
 小石原焼は今も登り窯で焼かれることがあり、小石原焼伝統産業会館では、登り窯をはじめ小石原焼の歴史や技法を学ぶだけでなく、陶芸体験をすることができます。

伝統技法を発展させる若き感性

 小石原地区には現在44軒の窯元があります。若手作家の台頭も著しく、伝統技法を用いながらオリジナリティあふれる個性豊かな作品が次々と誕生しています。若手作家を代表する鬼丸尚幸さんは「和洋どちらの食卓にも合う小石原焼を作りたい」と水玉模様や淡いピンク色の器、マットな質感など、様々な試みで小石原焼に新しい風を吹かせています。近年は全国展開する大手米コーヒーショップのご当地マグカップの窯元にも選定されています。
 窯元にはギャラリーを併設しているところが多いので、窯元めぐりを楽しみながら作家ごとに異なる作風を感じることができます。

伝統工芸を取り入れて暮らしを楽しむ

 東峰村では年2回、「民陶むら祭」が開催されます。期間中は小石原焼と高取焼の窯元が一丸となって村全体が会場となり、新作が続々と窯出しされます。2020年は5月3~5日、10月10~12日です。
 2017年7月には九州北部豪雨により甚大な被害を受けましたが、村民の復興への取り組みと全国からのご支援により「民陶むら祭」が途切れることなく開催されていることは、東峰村の誇りでもあります。
 家族で囲む食卓や食後のコーヒーを楽しむひとときに、お気に入りの器があると気持ちが和みます。手仕事で生み出される器は、そこにあるだけで特別な存在感を放ちます。忙しい毎日の中で、作り手から使い手へ想いを伝える伝統工芸品を暮らしに取り入れてみませんか。

 

〈取材協力〉  
小石原焼伝統産業会館
福岡県朝倉郡東峰村小石原730-9
TEL:0946-74-2266
翁明窯元
福岡県朝倉郡東峰村小石原1126-1
TEL:0946-74-2186

 

ページトップへ戻る