日本の美しいものづくりの旅【鎌倉彫(かまくらぼり)】

漆の艶と彫りの技巧によって生まれる陰影の味わい、
木の温もりが時代を超えて人々に愛され続ける。

カツラなどの木を用いて成形した木地に模様を彫り、その上に漆を塗ることで彫刻の立体感を強調した木彫。力強い彫刻と、塗り重ねられた漆の光沢が鎌倉彫の魅力です。 

鎌倉彫の変遷

 武士独特の文化が生まれた鎌倉時代。仏像や仏具製作に携わっていた仏師らが高度な木彫技術を基盤とし、当時の支配層(武家)が積極的に取り入れていた中国(宋時代)文化や、禅宗文化から伝わった彫漆(ちょうしつ)に影響を受けて考案したものが始まりと考えられています。
 鎌倉幕府滅亡後も唐物を意識した鎌倉彫の仏具が制作されていましたが、しだいに和様化が進み日本独特の鎌倉彫として確立しました。さらに室町時代・安土桃山時代を経て江戸時代になると、財力をもった商人を中心に町人文化が栄え、鎌倉彫は生活用具としても制作されるようになりました。茶道文化の発展と合わせて鎌倉彫茶道具の需要が拡大、茶人好みの作品が多く作られ、元禄七年(一六九四年)成立の「万宝全書」※に、鎌倉彫の名称と記述がみられます。
 明治時代になり神仏分離令が発せられると、鎌倉の仏師の多くは職を失い、後藤家、三橋家を残すのみとなりました。これを機に生活に使われる鎌倉彫に力を注ぎ、国内外の博覧会に積極的に出品したことで評価が高まりました。
※江戸時代の美術、茶道具の百科全書

気品と風格はそのままに
暮らしに溶け込む

 伝統を受け継ぎながらも鎌倉彫には決められた彫りや塗りの流儀、文様の形はありません。職人たちが自由に創造の翼を羽ばたかせながら、その時代の空気を写した作品に仕上げてきました。だからこそ鎌倉彫はつねに古くて新しいもの。そして一つひとつ丹念に仕上げられた作品と出逢うとき、豊かな感性を感じることができます。心にとめた器をひとつ、お部屋で使ってみるのもいいでしょう。忙しい日常の中でふと静かな時間が欲しくなったとき、ていねいに日常を送ることの大切さを思い出させてくれます。使い込むほどに味わいを増し、使い継がれるほどに手になじむもの。人々の想いが息づく工芸品です。

 

〈取材協力〉 博古堂(はっこどう)
神奈川県鎌倉市雪ノ下2-1-28(鶴岡八幡宮 三の鳥居脇)
*仏像の制作のために奈良からきた慶派の仏師をルーツにもつ鎌倉彫のお店。明治33年から「博古堂」として、鶴岡八幡宮の鳥居脇に店舗を構えている。

 

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