日本の美しいものづくりの旅【伊勢型紙】

京友禅、江戸小紋の型地紙となる「伊勢型紙」

 友禅、小紋、ゆかたなど着物の柄や文様を染めるのに用いる型紙。なかでも三重県鈴鹿市白子地区でつくられる「伊勢型紙」は、美濃和紙を加工した紙(型地紙)に、彫刻刃で丹念に文様を彫り抜いたものです。

 千有余年の歴史を誇る伊勢型紙の由来には諸説ありますが、大きく発展したのは江戸時代に入ってから。当時の武士の裃(かみしも)に型染が用いられ、細かい小紋が好まれるとともに、型を彫る職人と染める職人が協同で技術を切磋琢磨していったといいます。
 型地紙に彫られる柄や文様は、花鳥風月、吉祥文字、幾何学模様などをモチーフに、無数のバリエーションがあるそうです。手仕事で染め上げられた着物の美しさには誰もが目を奪われますが、染めるための道具である伊勢型紙の存在なくしては成立しません。高度な技術はもちろん、集中力や根気強さを要する精緻を極める手技と雅趣に富んだ仕上がりに、思わず感嘆の声とため息がこぼれます。

伊勢型紙のおこり

 伊勢型紙の発祥についてはさまざまな説があります。子安観音の和尚が虫食いの桜の葉の文様に着目して、伊勢型紙がつくられたという伝説や、京都の型彫り職人が技術を伝えたという説なども。
 江戸期に入ると、紀州領だった鈴鹿市白子・寺家の両町を中心に、徳川御三家の紀州藩の保護を受けて飛躍的な発展を遂げます。型売り業者が株仲間を組織して各地に行商したことで、伊勢型紙は全国に広まったのです。

伊勢型紙の彫刻技法

 伊勢型紙には4つの彫刻技法があります。いずれも特殊かつ高度な技術が必要なため、ひとり1技法を修得。現在、鈴鹿市には13名の伝統工芸士が活動されています。

今の生活に生かす

 現代では着物の需要が減り、機械染めが9割以上を占め、伊勢型紙の伝統の技を継承する人も少なくなっています。「染められてこそ本来の輝きが生まれる」と語る内田さんですが、技術の保存や維持向上のために、染型紙以外での多彩な応用も図られています。襖や欄間、障子、窓ガラスなどの建具や、行灯、ランプシェードなど照明器具に、伊勢型紙そのものを装飾したり、財布やペンケースなど小物雑貨に、伊勢型紙を使って染められた着物の生地を用いたり。日本古来の図柄に映された遊び心やグラフィカルなデザインは、今も新鮮な魅力に満ちています。

 

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