温故知新
日本の美しいものづくりの旅 【大川組子】

時を超えて心に響く伝統の手技をご紹介し、今日の暮らしを彩る知恵やヒントを新しく発見する温故知新(ふるきをたずねてあたらしきをしる)の旅。今号は、福岡県大川市の「大川組子」の旅へとご案内します。

まるで木片の万華鏡
建具の技法として生まれた「大川組子」

 柔らかな光が幾何学模様となった木片の隙間から零(こぼ)れる「大川組子」。組子とは、釘を使わずに木と木を組み付けて作る建具の技法のひとつで、その美しさから“木片の万華鏡”とも称されます。
 ここ福岡県大川市は昔から船大工が多く住み、高度な木工技術が受け継がれてきた歴史があります。そして約460年前、後に木工の祖と呼ばれる榎津久米之介(えのきづ くめのすけ)が、家臣の生活のためにタンスや机などの家具を作らせたことが大川家具の始まりとされ、建具職人が腕を競い合いながら、約300年前に建具の装飾として誕生したのが「大川組子」です。「大川組子」は1987年、福岡県知事指定特産工芸品に認定されています。

JR九州“ななつ星in九州”に採用された「大川組子」

 300年前といえば、久留米藩7代藩主・有馬頼徸(ありま よりゆき)が藩主となったころ。和算が得意だった頼徸は円周率を30桁まで算出したことでも知られ、「大川組子」の複雑な幾何学模様が発展した起因では!?と歴史浪漫に思いを馳せるのは、大川市役所の山田秀幸さんです。「大川組子は、JR九州のクルーズトレイン“ななつ星in九州”の車内装飾にも採用されています。毎年春と秋に開催される大川木工まつりをはじめ、海外にも発信していきたいですね」と力が入ります。
 そして、「大川組子」の伝統を忠実に守り、親子三代にわたってその魅力を伝えているのが仁田原建具製作所の仁田原進一(にたはら しんいち)さんと、息子の辰宏(たつひろ)さん、進二(しんじ)さんです。仁田原さん親子は、全国の組子ファンからの建具のオーダーメイドに応じる傍ら、各地の展示会に斬新な新作を出展しています。さらに伝統継承の一環として、子どもも楽しめる組子のコースター作りのワークショップにも参加するなど、大川組子の魅力を身近に感じてもらう活動をしています。

大川組子ができるまで

製作用の図面を起こし、材木を選定して0.8~2.0ミリほどの厚さに製材します。材木は主にヒノキ、スギ、ヒバ、ホオノ木、神代杉など。これらを「葉っぱ」と呼ばれる各種のパーツに加工し、基本の三組手で組まれる地組にはめ込んで、磨きや塗装で仕上げて組み付けます。

本物と暮らす上質なライフスタイル

 もともと建具や欄間に使用されてきた「大川組子」ですが、仁田原さん親子はそれ以外に、衝立や行灯などマンションで楽しめるインテリアの製作にも取り組んでいます。また、木の天然色が主流だった時代に、さまざまな木を組み合わせて色彩豊かなデザインを生み出したり、曲げわっぱをヒントに曲線を生かした花のデザインを考案したり、伝統工芸に次々と新しい風を吹き込んでいます。
 2016年ノーベル賞を受賞した東京工業大学 大隅良典栄誉教授に、福岡県民栄誉賞の記念品として贈られたのは、仁田原進一さん作の「大川組子ランプシェード」でした。「本物の大川組子は、接着剤に頼らず一つひとつのパーツを木の皮一枚でつないだり、木材の乾燥に5~20年を費やしたり、職人技の集大成なので耐久性に優れ、独特の風合いには味わい深いものがあります」と仁田原さん。“本物と暮らす上質なライフスタイル”に、木の温もりを感じる「大川組子」を取り入れてみませんか。

 

ページトップへ戻る