温故知新
日本の美しいものづくりの旅 【江戸切子】

新連載「日本の美しいものづくりの旅」は、時を超えて心に響く伝統の手技をご紹介しながら、今日の暮らしを彩る知恵やヒントを新しく発見していく、温故知新(ふるきをたずねてあたらしきをしる)の旅。今号は「江戸切子」の旅へとご案内します。

江戸切子は庶民から生まれた
ガラス加工技術

 江戸切子の歴史は、天保5年(1834年)にさかのぼります。江戸の日本橋大伝馬町でビードロ屋を営んでいた加賀屋久兵衛が外国から持ち込まれたガラス製品に彫刻を施したのが始まりといわれています。それから180年余。江戸切子は、無数の職人によって磨きをかけられ平成14年に日本の伝統工芸品に指定されました。

 現在も、代々技術を継承する職人のほか、新たに江戸切子に挑戦する若手も出始め、80~90人の職人がいるとされています。製造されている地域は江東区、墨田区、江戸川区、葛飾区、大田区など東京のいわゆる下町と呼ばれる地域と、埼玉県、神奈川県などがあります。

磨きの工程が
江戸切子の魅力を左右

 江戸切子の製法は大きく2つの工程にわかれます。被せガラス(*)を作り器のかたちに仕上げる工程。そしてその器に紋様を施していく加工の工程です。加工の工程はまず紋様の割り出し、ガラスの表面に図柄の目安となる印を付けます。筋摺りを経て荒摺りに進み、さらに細かいダイヤモンドホイールで紋様をきめこまかく削っていき(三番掛け)、砥石によって加工面を滑らかにしたら(石掛け)、最後に磨きに入ります。磨きの工程は非常に重要で丹念に磨いて透明度を出していきます。
(*)透明なガラスと色ガラスを合わせること。

江戸切子のデザインは伝統と
新しさの組み合わせ

 江戸切子のデザインは伝統的な紋様の魚子(ななこ)紋、矢来(やらい)紋、六角や八角の籠目(かごめ)紋、七宝(しっぽう)紋、市松(いちまつ)紋、麻の葉(あさのは)紋、蜘蛛の巣(くものす)紋、底菊(そこぎく)紋など、伝統的な紋様を組み合わせて作られています。

 特徴は透明なガラスの外側に被せる色ガラスが、非常に薄い点です。同じ切子でも薩摩切子は、色ガラスが厚いため色のグラデーションを楽しむ重厚感のある製品に仕上がります。対する江戸切子はカットが鋭角に入り繊細でやわらかなデザインによって粋の極みが生まれています。
 最近はマンションやオフィスビルのインテリアとしてもアレンジされている江戸切子。でもその真髄はやはり日常の食卓にあるといってよいでしょう。江戸切子は日々の生活を華やかに演出してくれます。北大路魯山人が赤い江戸切子の器に豆腐を入れて食したことは有名です。ボウル状の江戸切子に砕いた氷を入れ冷酒を冷やしたり、ワインクーラーとして使ったり。いつものガラス食器を使ったテーブルコーディネートでも江戸切子の醤油さしに醤油を少し入れて出すだけで食卓が華やぎます。また江戸切子の氷入れがついた「ちろり」に季節に応じてデコレーションをしたり、グラスやおちょこにアクセサリーを入れても素敵です。
 光の効果を計算した美しい色とデザイン、和とモダンの融合を楽しみながら、日常生活のなかで伝統工芸品を普段使いすることを上手に取り入れてはいかがでしょうか。

すみだ江戸切子館ホームページはこちら

 

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